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被せものと隣の歯のキツさはどうやって決めているの?

2020.9.02

目次

被せものと隣の歯のキツさはどうやって決めているの?

医療法人社団歯友会 赤羽歯科 信濃町 院長 大久保将哉です

今回は被せものと隣の歯のキツさをどのように決定しているかというお話です。
被せものを歯科医院にて装着されたご経験のある方はイメージしやすいかと思いますが、
まず思い出されるのは高さの調整時になにやら薄い紙のようなものをカチカチ噛んで下さいと何度か指示され高いと感じなくなるまで調整をされた記憶があるかと思います。
かみ合わせの調整にもルールがあるのですが今回はかみ合わせの調整前に行われる被せもののキツさ(我々は日常コンタクトと呼んでおります)の調整ルールについて掘り下げてみたいと思います。

歯科医院では被せもののキツさの調整時にコンタクトゲージと呼ばれる薄い金属のプレートを用います。
このコンタクトゲージの厚さは3種類ありそれぞれの柄の部分が色分けされております。

私の母校である新潟大学にて私が学生時分、補綴学という分野で教鞭を振るっていらっしゃた草刈 玄先生が1965年「接触点に関する研究―特に歯間離開について」という論文を投稿され、それをもとに適切な歯と歯のキツさを導き出されました。

どのような研究内容かといいますと、

歯間離開度(歯と歯のキツさ)とは
30μmから300μmにいたる10種類の段階的に厚さの異なる金属板を用い、1.2㎏以上の力が加わらないようにし、これを指頭圧で歯間に挿入し、挿入しうる最も暑い金属板の厚さをその歯間の歯間離開度といいます。

簡単にいいますと歯と歯の間に薄い金属のプレートを指で押し込み、押し込んで入る一番暑いプレートの厚さの数字を歯間離開度といいます。

この歯間離開度はキツ過ぎても緩すぎてもダメなのです。

研究結果によりますと
20代の正常歯列者の臼歯部における歯間離開度は50μmから110μmの間に分布
平均して上顎が92μm、下顎が70μm
年齢の増加によってばらつきが増え、やや値が大きくなる傾向がある
歯間離開度が110μmを超え、150μmと170μmを示すと食片が高率に挟まりやすくなる
50μmの金属片が入らない歯間は、接触が緊密すぎて歯の移動が起こり適正な接触点の位置が変化し、経時的に異常な歯間離開度を示すことがある

これらを鑑みると結論といたしまして

50μmよりきついと、歯が動いてしまう
150μより緩いと食べ物が歯と歯の間に挟まってしまう
つまり
50μmが入り、110μmが入らない状態を適正とする。

コンタクトゲージは信号と同じです

緑の柄  50μmの厚さ
黄の柄  110μmの厚さ
赤の柄  150μmの厚さ

上記の3種類のコンタクトゲージが入るか入らないかを毎回チェックしております。
もし歯科医院にて被せものの調整の日に来院されることがおありでしたらチラッと診察台を見回してみて下さい(笑)
コンタクトゲージを見つけたら心の中で「これかっ」と叫んでみて下さい。

医療法人社団歯友会 赤羽歯科 信濃町 大久保将哉
日本顎咬合学会 認定医